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「中国映画の隠された構造」テーマに、刈間文俊・東大名誉教授が講演

  日本日中関係学会研究会

刈間文俊東京大学名誉教授 【東京 講演 ブログ】

 日本日中関係学会 (会長・宮本雄二元駐中国大使) の研究会が9月27日(金)、東京・神田の学士会館で開かれ、中国映画史研究の第一人者、刈間文俊 東京大学名誉教授・南京大学客員教授が 中国映画の隠された構造〜微妙な違いから見えてくるもの〜 と題して講演。 貴重な映像の数々を紹介しながら、映画から見えてくる中国について深い考察で論じられました。

 会場には、中国映画に関心を持つ会員や日本の学生、中国人留学生らが大勢集まり、それぞれメモを取るなどして熱心に耳を傾けていました。

 刈間教授によると、中国映画は今や興行収入でアメリカに次ぐ世界第2位、製作本数はインドに次ぐ第2位 (2012−16年) の地位にあり、その規模や技術においてハリウッドに迫る勢いで急成長しているそうです。

 かつてのソ連をはじめアメリカ、日本など世界の映画の影響を受けつつも独自の発展を遂げてきた中国映画ですが、いまだに政治的表現などの制約が多い状況下にあり、隠されたメッセージを含んでいることもあるのだとか……。
 例えば、三国志の英傑・曹操の登場シーンを比べてみても、それは明らかです。
 中国の古典劇・京劇の 「長坂坡」 (1976) で描かれる曹操は、何人もの烝相が次々と登場し、「権力の重層構造」 がタップリ表現されてから最後のオオトリとして堂々と登場します。

 それに対して、近年の大作映画 「レッド・クリフ (赤壁)」 (2008、09) の曹操は、もったいを付けず、アッサリ登場…… (「権力の単層構造」)。 そのため 「どことなく物足りないし、どこか違和感を覚える」 と刈間教授は述べられます。

 このように刈間教授は、同様の登場人物 (役柄) であっても表現が異なるパターンをいくつか挙げながら、そのわけを 「租界から発展した経済都市で、観客層は南が中心である上海と香港」、そして 「官僚層が厚く、階層社会を重視する北京」 という映画製作都市の違いにあるのではないかと指摘。

 そのため京劇の曹操は、階層社会が 「重層的」 に描かれていたのに対し、中国・香港などで製作された 「レッド・クリフ」 の曹操は、権力が 「単層的」 に表現されていたと見解を述べられました。

 さらに、伝記映画の名手・丁蔭楠監督の作品 「孫中山」 「周恩来」 「小平」 の一部映像や写真を見ながら、例えば 「周恩来」 の劇中で描かれた賀竜将軍の追悼式のシーンは、実際に式典に参列した人々を集め、別れの悲しみをありのままに再現した……などという丁監督の徹底した細部へのこだわりについて紹介。

 「ソ連の映画にリアリズムを学んだ監督ですが、『細部にこそ真実は宿る』 『常にベストを尽くす』 という丁監督のリアリズムが、中国の伝記映画を独自の芸術に発展させた」 と中国伝記映画の独自性について触れた上で、「今、中国の若い監督たちは、(多く輸入される) アメリカや日本のドラマから学んでいるが、若者たちには伝統の中国映画や映画史からもっと学んでもらいたい。 古い文化、民族の文化は大事な要素で、それを生かした映画を作ってもらいたい」 と強調されました。

 このほか刈間教授から、2020年春節 (旧正月) に公開予定の中国の人気映画シリーズ 「唐人街探案 (とうじんがいたんあん) 3」 が栃木県足利市に東京・渋谷のスクランブル交差点を再現した撮影用オープンセットを建設、先ごろ大規模撮影が行われたことなど、「勢いがあり、若い才能に多くの機会がある」 中国映画の現状が紹介されました。

 続く質疑応答では、「中国の映画製作では、脚本の段階から審査 (検閲) が入るのか?」 「どのような審査が入るのか?」 といった鋭い質問が多く出されるなど、会場は熱気にあふれていました。


※ 写真は、日本日中関係学会研究会で講演された、刈間文俊東京大学名誉教授 (2019年9月27日)


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